すぐ鼻先にお肉が置いてあっても、
テーブルの端っこに
大好きな焼き芋が置いてあっても、
廊下にキャットフードが一粒、
落ちていてもクークは食べません。
そんなクークの、2才のお誕生日まで
あと15日の頃のお話です。
植木鉢に成った、食べ頃のイチジクの実を
2個もいで、テーブルの上に置きました。
このイチジクの木には、特別甘い実が成ります。
洗濯物を干しに行って、戻ってみると
イチジクがありません。
「あれ?テーブルの上に置いたような気がしただけかな?」
とも思いましたが、
自分のこれまでの動線をたどってみても
イチジクはどこにも無かったのです。
「う~~~~ん??」
自分の頭を心配しながら、この日は終わります。
翌日、
植木鉢のイチジクの木には
食べ頃になった実がもうひとつ。
今日こそはしっかりと覚えておこうと、
実をもぎ、大事に持って行き、
テーブルの上に置きました。
2階の用事を思い出し、
階段を上がりかけたのですが、
忘れ物をして戻ると!
テーブル上のイチジクを、クークが今まさに
咥えようとしているではありませんか。
私は「あーーーーーーっっ!」と叫び、
テーブルを手でバンバン!と叩きました。
狼狽するクーク。
しかし、ボケが進行してしまったかしら、と
心配した昨日の自分を思い出して、
テーブルバンバンだけでは気が収まらず、
クークの目のそばまで私の目を近付けて
「ガルルルル!!」
と言っておきました。
そういえば、
クークがまだ子犬だった頃から、
隙あらばこのイチジクの木に
走り寄ろうとしていました。
イチジクの樹液が良くないと
何かで読んだ事があったので、
近寄らせなかったのです。
イチジクには、クークに出来心を
起こさせるほどの魔力があったようです。
クークは現在、4才と10カ月です。
あの日以来、テーブルの上のイチジクが
姿を消す事はなくなりました。